笹子重治
onaka-ippai
(RSCG-1049) 2010

音の詳細はこちらで。
http://www.gemmatika.com/

ずるずる長いセルフライナーを書きました。
お暇でしたら、お読みください。

[ 僕は、「ソリスト」ではない。20代なかばまでは、ギターソロの真似事のようなこともやっていたが、練習も大変だし、人前にピンで立つのも大変だし、そういう大変さを乗り越えてまでソリストになりたい、という切実な欲求が、正直、無いのである。で、いつしかソロ活動もやめてしまい、歌手のバックをギター一本でやる、という活動が、ここ20年ぐらいの「デフォルト」となっていた。

 むしろ歌手のバックのようなことこそが、最もやりたかった活動だった、とも言える。歌手との活動だけでなく、20年続けている弦楽トリオ「ショーロクラブ」にせよ、数年前に立ち上げたユニット「コーコーヤ」にせよ、僕の役割は、「ガットギター1本で音楽の『場』を作る」という作業なのであって、詰まるところ、僕の作る「場」の上で、共演者の歌手の皆さんやユニットメンバーの皆さんに気持ち良くダンスを踊っていただきたい、というのが、僕の音楽に対する基本姿勢なのである。

 というワケで、時たま「ソロアルバムを作りませんか」というお誘いを受けることはあっても、その都度、「えーと、あの、ムニャムニャ」と言ったり、「還暦になったら考えます」と言ったり、もっとヒドイ時は「来世に」などと言ったりして、お茶を濁していたのであった。
 
 なので、今回のレコーディング、当初お話をいただいたときも、まずとっさに「ニゲル」ことを考えた。ところが、レコード会社社長の豪華な飲食の饗応を重ねて受けるうちに、だんだん逃げるワケにもいかなくなり・・、というのも半ば真実ではあるのだが、実際のところ「齢五十を過ぎた『伴奏屋』に、こういう企画がいつまでも来ると思うなよっ」という天の声もあり、内容についての、こちらのスタンスへの深いご理解とサジェスチョンもいただき、それやこれやで「内堀外堀」を埋め尽くされた状態となり、とうとう、じゃ、やるか、となったのが、2009年の秋。
 
 で、内容はどうするか。自分名義のアルバムと言っても、急に「華麗なるソロプレイ」が出来るワケでもなく、人様にお聞かせ出来るような素敵な歌が歌えるワケでもなく、結局はこの20年ぐらいの間にやってきたことを、「自分中心」に再編成するという以外に、出来ることはない、と思い定めた。この20年間やってきたこと、とは、上記2つのインストユニットを除けば、歌手とのコラボレーションである。
 
 例えば、EPOさんのバックをやるようになってもう18年ぐらいになるが、EPOさんとの共作が、まだ1曲も無かった。EPOさんとの作業においては、常にEPOさんが司令塔であり、僕は、その「指令」内容を、自分の持てる手段のうち最も効率よく実現出来る方法を考える、というのが、僕の変わらぬスタンスであった。逆に桑江知子さんは、アルバム2枚をプロデュースさせていただいて、ここ数年の桑江さんのレコーディングを中心とした活動の中での僕の「責任度」は、低からざるものがある。比屋定篤子さんは彼女のデビュー時から殆どずっとサポートしているが、レコーディングにおいては、僕は一兵卒のギタリストであったり、アレンジャーだったりプロデューサーであったり、いろいろであった。というような、それぞれの共演者の皆さんとのまちまちの距離感やスタンスを、自分を中心に統一再編成してみる、というのが、このアルバムのひとつの柱になるであろう。

 「そうは言っても、ソロも少しはやるでしょ」と、しかし、やっぱり言われてしまうのである。ソロ(ギター一本による純然たるソロにせよ、バックを従えた形にせよ)パフォーマンスというのは、技術的にも大変(もっと言えば、使う「筋肉」が違うのです)だが、精神的にバックとは相当違う心構えを要求されるのであって、客前商売のクセに人前に出るのが苦手?な僕にとっては、そのような「自己改造」は、出来ればナシで済ませたかったものである。しかし、実は僕も、ブラジルの伝説的ギタリスト、バーデン・パウエルの影響が無ければ恐らくプロにはなっていなかったのではないか、という「履歴」があり、自分自身のそういう「出自」を音として残しておきたい、という密かな願望があったことに、こういう事態になってから気づいた。

 そのように、比較的短期間に、いろいろなことがアタマの中を行き交い、それと同時に、曲もポロポロと湧いて出てきた。曲の中には、「あの人に歌って貰う曲を」と思いながら作ったものもあれば、出来てみれば「この曲はあの人に歌ってもらうしかない」となった曲もある。年明け以降、それぞれの歌手の皆さんにそれらの曲をお送りし、そしてしばらくしたら、素晴らしい歌詞がついて、それらの曲が戻って来た。音源をネットで遣り取りしたり会ってリハをしたりして、細かい部分を詰めた。某歌手とはカラオケルームでリハをして、そのあと飲みに行ったりもした。実に、至福の日々であった。
 
 というワケで、取り敢えず僕の名前を名義としたアルバムが出来上がった。きっと、ショーロクラブやコーコーヤなどのインストユニット活動「以外」の僕の今までの活動を一枚のCDとして表現したのが、このアルバムなのだと思う。余りにも多岐にわたりすぎていて、果たして1枚のアルバムとして成立しているのか、若干不安でもある。でも、すいません、今までこういう活動をしてきたんです、としか言いようがない。

 

おなかいっぱい!
vocal:Ann Sally
Horn Arr:黒川紗恵子

一汁三菜
vocal:畠山美由紀

波のローラー
vocal:比屋定篤子

一緒に帰ろう
vocal:比屋定篤子
chorus Arr:妹尾武

Assim Falou Baden Powell
〜バーデン・パウエルかく語りき〜
solo

シアワセの花
vocal:Yae

Madrugadas Cariocas
〜カリオカの夜明け〜
vocalize:EPO

ゆうばんまんじゃー
vocal:桑江知子

海に降る雨
solo

自転車
vocal:EPO
Horn Arr:村田陽一

Carta ao EDU 〜エドゥへの手紙〜
vocalize:EPO & Saigenji